熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「じゃあ行こう。部屋に見せたいものがあるんだ」
……もしかして、公衆の面前で抱きしめてきたのは、私を逃がさないためにわざと?
彼の抜け目のなさに唖然としてしまう。
「何なの? 見せたいものって」
「それは部屋についてからのお楽しみ」
悪戯っぽく微笑んだ横顔に、胸がトクンと鳴った。
この胸の高鳴りはいったい何なの? 彼の部屋に行けば、ハッキリする……?
彼に手を引かれてホテルの通路を歩く最中、私はずっと自問自答していた。
*
「さ、どうぞ」
案内されたのは、一般の客室とは別に独立したヴィラだった。
広々と開放的なリビングは壁のほぼ全面が窓のオーシャンビュー。けれど、ヴィラの周囲は海と南国の木々に囲まれているため、人目が気になる感じは一切ない。
むしろ、この部屋だけ世界から切り離された、秘密の隠れ家のようだ。
リビングと寝室を隔てるドアはなく、オリエンタルな柄のラグとその上に置かれた巨大な天蓋付きベッドの一部が、部屋の奥に見える。
テラスには、目の前に海があるというのにプライベートプールまでついていて、贅沢の極みを尽くしたような部屋に、思わずため息がこぼれた。