熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
この傲慢な御曹司のお金が、自分の生活費や画材を買う費用になっていたのかと思うとなんだか複雑だけれど、絵を気に入っているのは嘘じゃないみたいだから、よしとするか……。
そんなことを思いながら、私は絵画に見入る南雲の横顔を観察する。
頬に影を落とすほどの長い睫毛。尖った高い鼻、輪郭のハッキリした薄い唇。シャープな顎のライン……どのパーツも完璧で、本当にきれい。
すると、視線に気づいた彼が不意にこちらを向き、悪戯っぽく笑って指摘した。
「今、俺に見惚れてた?」
「えっ? ……そんなわけないじゃない」
否定が一瞬遅れてしまったのが不覚で、私はパッと彼から目をそらし、平然を装って髪を耳に掛ける。
その仕草を見ていたらしい南雲は、私のすぐそばまで近寄り真正面に立つと言う。
「俺は今、見惚れていたよ。……きみの耳朶が、ほんのり赤く染まってセクシーだなって」
「え……?」
「ほら、ここ」
南雲の手が、私の耳に優しく触れる。
「っ」
くすぐったさにぴくんと肩が跳ね、私は声にならない声を上げた。