熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
第二章
・一途な想いと恋敵
眩しい朝の陽ざしの中、俺はベッドの傍らに椅子を置き、スケッチブックに鉛筆を走らせていた。
はじめはベッドの中で、詩織の無防備な寝顔をぼんやり鑑賞していただけなのだが。それだけでは物足りなく感じて、彼女の美しい寝姿をデッサンすることに決めたのだ。
詩織はいっさい化粧っ気がないのに、高貴な顔立ちをしている。肌は透けるように白く、睫毛は地で長いし、何も塗っていないはずの唇は鮮やかなピンク色。
横向きに眠る彼女の肩には、艶めくストレートロングの髪がさらりと掛かっていて……。
そんな彼女のパーツをひとつひとつ丁寧に描いていくにつれ、胸に愛しさが募っていく。
俺にはない、独自のセンスと才能にあふれた彼女に惹かれたのは、俺が大学生、彼女が高校生のころ。
本当は俺自身も絵の道に進みたかったのだが、希望していた美大でなく、親の意向によってほぼ強制的に名門私立大に進学させられ悶々とする日々を送っていた。
しかしひょんなきっかけから、詩織の絵を描く姿を見かける機会があり、俺は悟った。
自分には絵の才能がないこと。反対に、この女子高生はいずれ著名な画家に成長するであろうことを。