熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
俺は詩織にわずかな嫉妬心を抱いたが、それ以上に、彼女の纏う女子高生とは思えない堂々としたオーラや美しさ、キャンバスと向かい合う彼女の真剣な瞳に心奪われ、いつの間にか恋をしていた。
しかし、当時は想いを伝えるどころか声をかけることすらできなかった。彼女の瞳が、別の男を見つめているのを知っていたからだ。
そのうち、俺は偶然にも彼女がその男に告白するシーンを目撃してしまう。
けれど、詩織の恋は成就せずに、彼女は絵の道に生きることを決意した。
普通の女子高生にはできない、孤独で苦しい選択だっただろう。
俺はそんな彼女を陰ながら応援すると決め、同時に自分も自分にできる限りのことをしようと、ようやく南雲グループの後継者になる踏ん切りがついたのだった。
その後もひたすら芸術の道に突き進む彼女と直接どうこうなろうなんて気はなく、俺はほかの何人もの女たちと恋愛ごっこを繰り返した。
が、そんな表面的な恋人関係は、満たされない心と体を一時的に潤すだけにすぎない。
俺は胸の奥でいつでも詩織を想い、行き場のない恋心をくすぶらせていた。