熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
くすぶりは少しずつ、けれど確実に大きくなっていて、手に入れた彼女の絵を時折眺めるだけでは満足できなくなってきた。
そしてつい最近、そんな俺の焦燥感を煽るように、目の前にある男が現れた。
俺の選べなかった自由な人生を謳歌し、唯一詩織の心をつかまえたことのある憎き恋敵でもある実の兄、臼井桔平(うすいきっぺい)が。
兄の姓がなぜ南雲でないのかというと、結婚したとき婿養子に入ったからだ。
そもそも長男なのに会社を継ぐ気がない兄に親も呆れていたから、婿養子になるという話にもそれほど驚かず、匙を投げた状態で結婚を認めた。
兄が好き勝手やればやるほど、親の期待の矛先はすべて俺に向けられ、それを重荷に感じることもあったが、俺は必死で前に進み、期待に応えた。
仕事で数々の成功を築き、次期社長として不足のない男だと周囲にも認めさせることもできた。