熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「きみがSHIORIか。思っていたより美人だな。悪くない仕事になりそうだ」
「は……?」
全く意味不明である。美人って、私のこと?
メイクもせず、手入れの行き届いてないロングヘアはポニーテールにしただけ。服装もタンクトップにデニムのショートパンツという、女らしさなんか全くないこの私のどこが?
不可解な表情で固まる私に、彼はペラペラと自己紹介をはじめる。
「俺は、南雲梗一(なぐもきょういち)だ。きみも日本人なら知ってるだろう、広告代理店の南雲グループ。俺はそこで副社長をしている」
「南雲グループ……」
私自身、日本のいくつかの広告代理店とは絵の使用に関して契約を交わしたことがある。けれど、そのどれもが名の知れていない中小企業。
それに比べて南雲グループだなんて、テレビ広告もバンバン手掛けるし、クライアントは一流企業ばかり。ワールドカップやオリンピックなどの大きなイベントには必ず関わっていて、間違いなく日本でトップの広告代理店だ。
そこの副社長が、なぜこんな場所で油を売っているの?
「で、ここへ来た目的だが。率直に言って、きみを口説き落とすため、だ」
「は……?」
ますますわけがわからず、私はまじまじと南雲という男の顔を見つめた。