熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「描けるさ。むしろ、今までよりいいものが」
「……どうしてそう思うのよ」
「確かに恋は人を脆くすることもあるけど、互いを高め合う力だってあるんだ。現に、俺は詩織を想い続けることで、今の地位を築いた。詩織の存在が支えになっていたからだ。俺もきみにとって、そんな存在でありたいと思う」
「梗一……」
詩織の潤んだ瞳が、静かに俺を見つめる。
少しは、俺の気持ちが詩織に届いただろうか。そんなことを思っていたら、急に辺りが暗くなってきたことに気づく。穏やかだった風も強くなり、木々がざわざわと葉を揺らした。
「……いけない、スコールが来るかも」
「それはまずいな。急いで森を出よう」
俺たちは話を中断し、森の出口へと急ぐ。来た道を戻るだけなので迷うことはなかったが、森を出ても川で服を濡らしてしまった俺はタクシーを呼ぶわけにいかなかった。
そこで、歩いて行ける場所にある詩織のアトリエに一旦身を寄せ、服を乾かしてもらうことになった。