熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・聖域で重なり合う肌色
なんとか雨が降り出す前にアトリエにたどり着き、俺はさっそくシャワーを借りた。粗末なコテージなのでお湯が出るのか心配になったが、さすがにそこはちゃんとしていた。
服がないので腰にバスタオルを巻いて、詩織の作業場となっている一番広い部屋へ戻る。
描きかけの絵の前に座っていた彼女が足音に気付いて振り向き、それから激しく雨粒がぶつかる窓を指さして言った。
「雨、今がピークね。間に合ってよかった」
「……だな。まったく、気まぐれな島だ。晴れていたかと思ったらこんなに激しいスコールだなんて」
「そうね。……あ、寒くない? コーヒーでも入れるね」
俺の格好を不憫に思ったらしい詩織が、簡素なキッチンに向かう。そこは作業場と違って片付いてはいたが、整頓されているというよりは全く使っていないという雰囲気だった。
詩織は小さな赤いケトルを火にかけ、マグカップをふたつ準備する。その所帯じみた姿は全く詩織らしくなく、お世辞にも手際がいいとは言えない。
しかし、俺のために慣れないコーヒーを入れてくれるというシチュエーションにぐっときて、つい彼女にちょっかいを出したくなってしまう。