熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「ちょっと……!」
「悪いけど、そんな主張を聞ける余裕はない。……さっきも言ったろ? 我慢の限界なんだ」
俺は飄々と宣言すると、さっき寝室だと教えられた場所に向かってずんずん足を進めていく。
かすかに開いていた扉を体で押すと、窓際に置かれたシンプルな木のベッドが目に入った。
俺は迷わずベッドに近づき詩織を優しく下ろすと、横たわる彼女の体に覆いかぶさる。そして、今にも襲い掛かりたい気持ちをなんとか自制して、彼女に確認した。
「……本気で逃げたいなら、今が最後のチャンスだ。でもそうでないなら、俺を信じて身を委ねて欲しい」
……正直、女性を抱くのにこんなに時間をかけたのも、こんなに真剣に口説いたのも初めてだ。
今まで繰り返してきたお遊びの恋愛では、そもそも女の方から関係を持ちたがっていたから、俺はただ相手の要求に応えつつ、自分の欲を発散するだけでよかったのだ。
でも、詩織に対してだけは、そんなふうに都合よく割り切れない。喉から手が出るほど彼女が欲しくても、傷つけてしまうのだけは避けたかった。
だから、何度も何度も愛情を伝えて、甘い視線を注いで、キスをして。
俺に、恋をしてほしい。そう切に願っていたんだ。