熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「詩織。どうだった?」
声をかけると、彼女は無言で俺に寄り添い、顔を隠すようにして俺の裸の胸に顔をくっつけた。そして、蚊の鳴くような声でぽつりとつぶやく。
「悔しいけど……あなたの望み通りになったわよ」
そういうまわりくどい言い方をするのは、いつも彼女が照れているとき。今回もそうに違いないと思うと、俺の頬は自然と緩んだ。
……まったく、もっと素直になればいいのに。
「つまり、俺に首ったけになったってこと?」
俺は詩織をからかいたくなって、わざと自意識過剰な質問をした。彼女なら絶対、ムキになって「違うわよ」と否定するだろうと想像しながら。……でも。
「……うん」
聞き逃してしまいそうなほどの小さな声で、詩織は短くそう返事をした。
いつになく素直で従順な彼女に俺は驚き、彼女の顔を体から引きはがしてその顔を覗き込んだ。
「な、なによ……」
詩織は真っ赤になって、ふいっと目をそらす。
その仕草は今までと違い、恋に落ちた女性特有の甘い空気を漂わせていて、いじらしいことこの上ない。