熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~

「梗一」

テラスに出て、プライベートプールでひとりしなやかに泳いでいた彼に声をかける。

私の姿に気づいた彼は方向転換し、私の目まで来ると泳ぐのをやめてプールの中に立ち、濡れた髪をかき上げた。

「おはよう、詩織。よく眠れた?」

髪から垂れる雫や、張りのある逞しい筋肉が、太陽の光を反射して眩しい。

「ええ。……少し、昔の夢を見たわ。苦い失恋のね」

冗談めかして言うと、梗一は無言でこちらに向かって濡れた腕を伸ばした。私の過去の失恋に同情して、キスでもするつもりだろうか。

「なに?」

首を傾げつつも、プールサイドのギリギリまで近づいて、彼の手に自分の手をそっと重ねてみる。するとその手を握った彼に、突然ぐいっと引っ張られて。

「きゃっ!」

ザブン!という激しい音とともに行きついた先は、水の中。

私は何が起きたかわからないまま、水面から顔を出すと彼に詰め寄った。



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