熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「ちょ、ちょっと、溺れたらどうするのよっ」
かろうじて底に足はつくけれど、肩までは水の中に浸かっているため体が不安定にゆらゆらする。梗一はそんな私の手をぐいっと引き、裸の胸に抱き寄せて言った。
「……今は、幸せだよな?」
「え? ……どうしたのよいきなり」
「例えば今、その過去の失恋相手が目の前に現れたとしても……詩織は、俺を選んでくれるよな?」
そっと体を離した梗一が、不安げに私の瞳を覗き込んだ。
どうして、そんな顔をするの? そりゃ、私は梗一みたいに甘い言葉をささやいたりだなんてしないけれど、彼への想いは態度で示しているし、ベッドの中では普段より素直になっているつもり。
それで十分だと思っていたんだけど……。
「過去は過去よ。言ったでしょう? 私の心にあなたが住みついて離れないって」
私はそう言ってプールの底につま先立ちをすると、濡れた唇同士をそっと合わせた。
……あなたのことが好き。重ねた唇からそれが伝わればいいと祈りながら。
長いキスの後、ゆっくり目を開けた私は、安心してくれた?と彼に視線で問いかける。