熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・一分一秒でも長く
その夜、梗一は熱を出した。おそらく、プールに長い時間浸かっていたのがまずかったのだろう。ホテルに用意してもらった薬を飲んでからは、大人しくベッドに横たわっている。
頭にタオルを乗せて赤い顔をする彼は、不謹慎だけどちょっと可愛らしい。
私はベッドサイドに椅子を置き、その可愛らしい寝顔を看病という名目でずっと見つめていた。
「鬼の霍乱(かくらん)ってやつね」
「……ちょっと面白がっているだろう、詩織」
私の失礼な呟きに、寝ていると思っていたはずの梗一が、うっすら目を開けて力なく微笑んだ。私は静かに椅子から降りて、梗一の枕元で跪くと彼の熱い手を握る。
「起きてたの? どう? 具合は」
「……今起きた。が、まだ寒気がする」
「そう……。ゆっくり休むしかないわね。あなたは島の気候にも慣れていないし、疲れが出たのよ」
そう言って穏やかな笑みを向けると、梗一は弱々しく苦笑した。
「ありがとう。……たぶん、この休暇を取る前の数日間、問題なく休むために多少仕事で無理をしたのもあるんだと思う。満足な睡眠もとっていなかった」
「もう……ばかね」
口ではそう言いつつも、自分に会うためにそこまでしてくれたという事実に喜びを感じずにはいられなかった。彼はこう見えて、意外と一途らしい。