熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・プロポーズの行方
シャワーを終えた私たちは、レストランで遅い朝食を取り、出かけることになった。
梗一が、どうしても私を連れていきたい場所があるのだという。
しかし、タクシーに乗り到着した場所は島に唯一ある空港で、てっきり島内のどこかに行くのだとばかり思っていた私は慌てた。
「ちょっと、まさか飛行機に乗るつもり?」
「ああ。といっても、別に国外に出るわけじゃない。バンコクに用があるだけだ」
「バンコク……?」
行き先を知らされても、彼の目的が分からないままでは戸惑いが消えない。
梗一はいつまでも怪訝そうにする私をたしなめるように手をつなぐと、強引に飛行機に乗せて島の外へと連れ出した。
およそ八十分の空の旅を終え、バンコクの空港を出るとまたタクシーに乗せられた。移動ばかりで少々疲労がたまった私は、思わず不機嫌に口をとがらせて尋ねる。
「ねえ、まだなの?」
「もうすぐ……ほら、ここだ」
梗一に促されてタクシーを降りると、目の前に大きなビルが建っていた。
スタイリッシュな外壁には、ファッションや流行に疎い私でも知っている、世界的なジュエリーブランドのロゴが。