熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「……何の用があるの、ここに」
ジュエリーなど一度も身につけたことがなく、あまり興味を持ったこともなかった私は、梗一の目的が分からずきょとんとして彼を見上げる。
「詩織ならそんな反応だと思ったよ。まあいい。中に入ればわかる」
梗一は少しがっかりしたように苦笑してから、気を取り直したように私を店内にエスコートした。
白を基調とした高級感漂う内装、指紋ひとつないガラスケースに並ぶ、ジュエリーを使ったさまざまなアクセサリー、上品な笑みで出迎えてくれるスタッフたち。
どれを取っても素晴らしいお店だというのはわかるけれど、普段と同じラフな服装で来てしまった私は、とても居心地が悪い。
「ねえ、用が済んだら一刻も早く店を出たいんだけど」
「それは、詩織の返事次第だ。ま、俺としてはすぐに店を出る結果になるのは避けたいけど……。excuse me」
梗一はわけのわからないことを言って、近くの男性スタッフを呼んだ。そして英語で短い会話をしたかと思うと、別の女性スタッフが私たちのもとにやってきた。
どうやら日本語のわかるスタッフを呼んでくれたらしい。