熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
さすがはサービスの行き届いた高級ブランド店。おそらくほかにも、さまざまな国籍の観光客に対応できるスタッフがいるのだろう。
そんなことをぼんやり思っていた私の耳に、驚くべき梗一の言葉が入ってきた。
「婚約指輪に最適なものを」
……今、婚約って言った? 一体、誰と誰の?
私が呆気に取られているのも気にせず、スタッフは「かしこまりました」と、ガラスケースからいくつか候補を物色している。
梗一がちらりと私の方を向き、小首をかしげて優しく尋ねてきた。
「詩織。まだわからないのか?」
甘く、それでいて意味深な梗一の視線に、直接何か言われたわけではないのに、胸がドキドキと高鳴りだす。
ま、待ってよ……。わざわざ私をバンコクまで連れてきて、こんなジュエリーショップに入って、婚約指輪を探している……って、もしかしてそういうことなの?
おずおず彼を見上げ、私は勇気を出して問いかける。
「もしかして、私に……?」
「ほかに誰がいるんだよ。……突然で困惑するかもしれないが、俺は最初からそのつもりで、はるばる日本から詩織に会いに来たんだ」