熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
・バカンスの始まり
たくさんの人でにぎわう、夕暮れの市街地。
提灯に似たカラフルな照明が並んでぶら下がる通りは異国情緒たっぷりで、この島で大好きな場所のひとつだ。
私は以前このあたりの店で買った、エスニック柄のワンピースを翻しながらのんびり歩き、その風景とにぎやかな雰囲気を楽しむ。
通りに所狭しと軒を連ねる露店からは美味しそうな香りが漂い、食欲をそそられた。
やがて、昼間南雲に乱された心も次第に落ち着きを取り戻してきた。
アトリエに帰ったらまた絵を描けそう。
そこまで気分が回復すると、私は何も買わずに来た道を戻り始めた。
市街地を離れると急に人の気配はなくなり、目の前には広大な田園地帯が広がる。
同時に聞こえてくるのは、蛙や虫の大合唱。そのやかましさに最初は驚いたものだけど、慣れれば大したことはなく、私は軽い足取りで田んぼのあぜ道を歩いた。