熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
優良はさばさばとした性格で、昔から父親の地位や権力に依存することのない自立した女性だった。
そんな彼女なら、俺の置かれた状況を理解し、味方になってくれるだろう。
俺は当然のようにそう思っていたから、東京へ戻ってすぐに彼女とコンタクトを取ったのだが。
「断る、って言ったら?」
白ワインをひと口飲み、気だるそうに頬杖をついた優良が俺に意味深な笑みを向ける。
「え?」
「別に梗一のことが好きとか、そんな甘い理由じゃないわよ? でも、私ももう三十一でしょ? モデルとして生き残るには難しい時期にさしかかっていて、なにか話題になる一手が欲しいところなのよ」
優良は小さくため息をつき、憂いを帯びた瞳で窓の外を見つめる。
「……それが俺との結婚ってことか?」
「そう。梗一が相手ならメディアも喜ぶし、ファンにも夢を見せてあげられる。〝さすがは人気モデル天海優良。捕まえる男も極上だ〟って感じでね」
そう言って再びこちらを向いた瞳は明るく、優良はどうやら本気のようだった。でも、彼女の話題作りに利用されるのはごめんだ。
「そんなことで話題になっても、一過性のものだろう。……第一、俺には別に結婚したい相手が――」
「知ってるわ。画家のSHIORIでしょう?」
俺の言葉にかぶせ、優良がそっけない口調で言い当てた。