熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「……父から聞いたのか?」
「ううん、桔平さんよ。あなたがSHIORIに会いに行っている間に私のところへ来たの。それでこう言ってたわ。〝梗一は彼女を連れ帰って結婚するなんて言ってたけど、きっとSHIORIの芸術活動を妨げるような愛し方しかできないから、うまくいかないと思う〟って。どうやら彼の予想は当たっていたみたいね。張り切って十日も休みを取ったのに、その途中でひとり帰国したんでしょう?」
そう言った優良の同情するような眼差しに耐えられず、俺はふい、と目をそらす。
すべてが間違いとは言わないが、俺と詩織がうまくいかなかったのは事実。そして理由も、兄の言った通り自分が至らなかったせいだ。
でも……俺があんな強引な手段を取らざるを得なかったのは、もとはと言えば兄のせいだ。いったい、兄は何がしたいんだ。
俺が無言のまま、胸の内で兄への苛立ちを募らせていたそのときだった。
「あなたの気持ちがSHIORIにあるのは、別に構わないわ。それでもいいから、私と結婚してほしいの。そして、あなたの子を産ませて」
俺の、子……?
優良の大胆発言に衝撃を受け、俺は思わず眉間にしわを寄せる。