熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「……優良、いったい、何を言って……」
「冗談でもなんでもないわよ。さっきあなたが言ったように、結婚話が話題になるのは一過性かもしれない。でも、あなたの子を産んで、ママモデルとして活躍することができれば、私はもっと長く業界で生き残れる」
あまりに自分勝手で打算的な未来予想図を、さも素晴らしい思い付きであるかのように語る優良に、俺は寒気がした。
「そんなやり方で生き残ってうれしいのか? プライドはないのか?」
「プライドなんて……そんなもの守っている場合じゃないのよ。三十を過ぎてから、今日みたいにちょっといいご馳走を食べてしまうと、すぐ体重や見た目に出てしまうようになった。もちろん、ストイックに体を絞ってキラキラしている同年代のモデルもいるわ。……でも、私はもう、第一線で輝くのは無理。だから、多少姑息な手を使ってでも、別の道で生き残るしかないのよ」
優良はそう言って、グラスに半分ほど残っていたワインを一気に煽った。
きっと、モデルである彼女の生きる世界には、一般人にはわからない苦悩があるのだろう。それを否定するつもりはないが、だからと言って優良に協力することなどできない。