熱情バカンス~御曹司の赤ちゃんを身ごもりました~
「優良の気持ちはわかったが……俺には、話を聞くぐらいしかできない。優良とそれ以上の関係になるつもりはないよ」
「どうしてよ……。これも桔平さんに聞いたことだけど、私と結婚しないと社長になれないんでしょう?」
そんな話まで優良に聞かせるとは……兄の思惑が、ますますわからない。
「その話も、俺は寝耳に水なんだ。でも、兄の思い通りにさせるつもりなんてない。……優良も見ていろ、俺は必ず社長になるし、詩織のことも手に入れる」
俺が強気に宣言すると、優良も負けじと挑発的な態度でこう言った。
「……そう。今日のところは引き下がるけど、私もまだ諦めないから」
まさか、本来なら味方につけようと思っていた優良が敵に回るとは予想外だった。
もはや四面楚歌の状態だが、それでも、心が求める存在は詩織ただひとり。彼女を再びこの手に抱きしめるためなら、全力で戦ってやるさ――。
俺は胸の内で静かに闘志を燃え上がらせながら、ずっと口をつけないままだったワインに手を伸ばした。