ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「あなたは子供を産んだそうね」

心臓がドキリと音を立てた。オリーヴィア様はリラのことを知っているの?

「あ、あの……」

「レオン様のお子なのは知っています。あなたが勝手に他国に連れ去ったことも」

「勝手にって……」

「勝手でしょう? 皇家の血筋の赤子の進退はあなたごときが自由に決めて良いものではありません。あなたはラヴァンディエの皇女を誘拐したのです。レオン様はお優しいから罪に問わなかったのかもしれませんが、公にすればあなたはただではすみませんよ」

オリーヴィア様の追及は私を追い詰めた。

誘拐? 罪? そんな風に言われるなんて思わなかった。

父親であるレオンにだって責められなかったのだもの。

「オリーヴィア様……私、そんなつもりはありませんでした。娘を身籠ったとき、レオン様とは連絡が取れない状況で、もう会えるかも分からなかったのです」

「そうだとしても、今後は今のままではいられないわ。あなたの産んだ子は皇女として皇家に迎え、皇妃の私が養育します」

「え? そ、そんな!」

リラを他の誰かが育てる未来なんて想像したこともなかった。

だってあの子は私が生んだのだ。赤ちゃんの頃から育ていつだって一緒だった。

他の人があの子にママと呼ばれるなんて耐えられない。

「いやです……それだけは出来ません」

震えながら口にすると、オリーヴィア様はすっと目を細めた。

「あなたにはレオン様の娘を守る力はないでしょう? 子供を危険にさらしておくつもりですか?」

冷たい言葉だったけれど、それはカイルにも言われたことだった。

「今が平和だからってこの先も安全ではないと言う事は理解しています……これからはもっと気を付けます。今の住まいを移してもっとラヴァンディエから遠ざかってもいい」

「本当に何も分っていないわね。今も平和ではないのよ」

私は眉をひそめた。

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