ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
第七章 行方知れず
混乱していた私に気付いたのか、先生が気持ちを安定させる薬を出してくれた。

そのおかげでリラを寝かしつける頃には、大分落ち着くことが出来ていた。

それでも気持ち良さそうに眠る小さなリラを眺めていると気分が沈んだ。

この子の安全だけは守らないといけない。

だけど、どうすればいいのだろう。

オリーヴィア様に言われたことをレオンに話して、彼女をリラから引き離して貰う?
だけど、それで解決するのだろうか。

私はレオンとオリーヴィア様の関係がどんなものかは知らない。

婚約はしなかったと言っていたけれど、どれくらい親しかったのか、そういった事を何も知らないのだ。

レオンは私の言葉だけを信じてオリーヴィア様を遠ざけてくれるのだろうか。

もし信じてくれたとして、レオンにそれだけの権力があるのだろうか。

オリーヴィア様の話ではレオンに反感を持っている家臣がいるようだった。そういった人たちに阻まれてしまうのではないの?

私が居なくなればリラは皇女の身分を得て、レオンとオリーヴィア様の庇護の下で暮らせる。もう毒を飲まさせれることはない。

ふたりの力を合わせればきっとリラは守られ、安全に暮らしていくことが出来るだろう。

そしていつかは本来の生まれに相応しい相手と結婚して幸せに暮らしていく。

でも私と一緒に居たら?

なんとかここから逃げ出してティオール王国よりももっと遠くに逃げたとしても、常に危険が付きまとう。いつ見つかるか不安に怯えながら暮らす日々。

生活も貧しく、十分な教育も与えられないのが目に見えている。

リラの為だけを思えば私ひとりが居なくなるのが一番だ。

急にママが居なくなったら初めは泣くかもしれないけど、リラにはレオンが付いている。

いつかは寂しさも薄れ、新しい生活に慣れて行くだろう。

だけど……そんな風に私を忘れて過ごすレオンとリラの姿を想像すると涙が溢れてしまう。

寂しくて仕方ない。

私はリラと……レオンと離れたくない。一人になるなんて耐えられない。

どうすればいいのか分からない。

小さな手を握りながら私はハラハラと涙を流し続けた。


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