ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
夢を見た。
レオンと私はルメール館の中庭でのんびりと花を眺めている……これは幼い頃の記憶だ。
花壇の中にひと際目立つ大輪の赤いバラが有った。私はそれを指差しながらレオンに声をかけた。
『このお花綺麗。レオン様もそう思うでしょう?』
『そうか? 花なんて気にしたこともないからな』
言葉通りレオンはあまり関心がないようで薔薇をちらりと見たあと、明後日の方を向いてしまった。
『何見てるの?』
『雲。雨が降りそうだと思って』
『そうなの?』
今日は朝から天気がいいのにと思いながら、私は空を見上げた。
『遠くから雨雲が近づいて来ているだろ?』
レオンの指さす方には黒っぽい雲があった。
『あの黒いのが雨の雲?』
『そうだよ』
黒い雲は段々近づいて来ていた。もう散歩はおしまいなのかと思うとがっかりしてしまう。
けれど、
『そろそろ来そうだな。温室に行くぞ』
レオンはまだ花を見ていたい私の気持ちを察してくれたのか、手を引き中庭の先にある温室へと向かって行く。
自分は花になんて興味がないのに。
温室に入ると直ぐに雨が降り出した。
ガラスの天井を雨が叩く。
『危なかったね』
雨雲に気付くのが遅れていたら濡れてしまっただろう。
『ああ。直ぐにやむだろうからそれまではここにいよう』
レオンは空を眺めて言う。天気予報が出来るみたいだ。
『いいなー私も天気が分ったらいいのに』
『雲のこと勉強すればいいだろ』
『うん、そうなんだけど』
勉強が好きじゃない私は眉をひそめてしまう。するとレオンがふっと笑って言った。
『まあ分からなくてもいいんじゃないか? イリスにはいつも俺がついているんだから』
『え?』
『雨が降りそうなときは俺が教えるよ』
私は少し戸惑って首を傾げた。
『でも、レオン様はいつかルメールを出て行ってしまうんでしょう? そうお父様が言ってたけど』
レオンは少し考えてから、何でもないように言う。
『行かないよ。イリスの側にいる』
『本当に? 大人になっても』
私は嬉しさのあまりぴょんと跳ねるようにしてレオンの腕にしがみつく。
『ああ、イリスを放っておけないし』
苦笑いのレオンの腕を私はぎゅっと抱きしめた。
嬉しい、嬉しい。
これからもレオンと一緒に居られるんだ。
『約束ね、大きくなってもずっと一緒だって』
『ああ、約束するよ』
『ふたりだけの約束ね』
花の香でいっぱいの温室で、レオンと秘密の約束をした。
あれは、レオンがルメールに来て、一年が経った頃のことだった―――――。
レオンと私はルメール館の中庭でのんびりと花を眺めている……これは幼い頃の記憶だ。
花壇の中にひと際目立つ大輪の赤いバラが有った。私はそれを指差しながらレオンに声をかけた。
『このお花綺麗。レオン様もそう思うでしょう?』
『そうか? 花なんて気にしたこともないからな』
言葉通りレオンはあまり関心がないようで薔薇をちらりと見たあと、明後日の方を向いてしまった。
『何見てるの?』
『雲。雨が降りそうだと思って』
『そうなの?』
今日は朝から天気がいいのにと思いながら、私は空を見上げた。
『遠くから雨雲が近づいて来ているだろ?』
レオンの指さす方には黒っぽい雲があった。
『あの黒いのが雨の雲?』
『そうだよ』
黒い雲は段々近づいて来ていた。もう散歩はおしまいなのかと思うとがっかりしてしまう。
けれど、
『そろそろ来そうだな。温室に行くぞ』
レオンはまだ花を見ていたい私の気持ちを察してくれたのか、手を引き中庭の先にある温室へと向かって行く。
自分は花になんて興味がないのに。
温室に入ると直ぐに雨が降り出した。
ガラスの天井を雨が叩く。
『危なかったね』
雨雲に気付くのが遅れていたら濡れてしまっただろう。
『ああ。直ぐにやむだろうからそれまではここにいよう』
レオンは空を眺めて言う。天気予報が出来るみたいだ。
『いいなー私も天気が分ったらいいのに』
『雲のこと勉強すればいいだろ』
『うん、そうなんだけど』
勉強が好きじゃない私は眉をひそめてしまう。するとレオンがふっと笑って言った。
『まあ分からなくてもいいんじゃないか? イリスにはいつも俺がついているんだから』
『え?』
『雨が降りそうなときは俺が教えるよ』
私は少し戸惑って首を傾げた。
『でも、レオン様はいつかルメールを出て行ってしまうんでしょう? そうお父様が言ってたけど』
レオンは少し考えてから、何でもないように言う。
『行かないよ。イリスの側にいる』
『本当に? 大人になっても』
私は嬉しさのあまりぴょんと跳ねるようにしてレオンの腕にしがみつく。
『ああ、イリスを放っておけないし』
苦笑いのレオンの腕を私はぎゅっと抱きしめた。
嬉しい、嬉しい。
これからもレオンと一緒に居られるんだ。
『約束ね、大きくなってもずっと一緒だって』
『ああ、約束するよ』
『ふたりだけの約束ね』
花の香でいっぱいの温室で、レオンと秘密の約束をした。
あれは、レオンがルメールに来て、一年が経った頃のことだった―――――。