ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
第九章 離れない約束
私が真実を知ったことでリラの診療は完了した。

先生たちにお礼を言うと、逆に黙っていたことを謝罪されて恐縮してしまった。

内緒にされたことは悲しかったけれど、リラの為には良かったのだと思っている。

和やかに会話をし、離れの病室に戻った私たちを、驚くことにルメールの両親が待っていた。

「お父さま、お母さま……どうして?」

唖然とする私に、横から声がかかる。

「レオン様のご命令で、私がお連れしました。ラヴァンディエへ出発の日まで、ご両親とゆっくり過ごすようにとのことです」

カイルだった。

「あ、ありがとう……あのレオンは?」

「外出されています。オリーヴィア姫の件の事後処理もありますので。御用は私が承ります」
カイルは、いつも通り冷たい表情で淡々と言う。

「イリス……良かった、元気そうで。ずっと心配していたのよ」

お母様が涙ながらに言う。

「何も助けてやれなくてすまなかった」

お父さまが辛そうに言う。

「お父さま、お母さま……ごめんなさい、心配をかけて」

胸の痛みを感じながら私は両親に寄り添った。

ルメールを出る時は分からなかったけれど、今なら分る。

ふたりがどれだけ私のことを心配してくれていたのか。

子供を諦めなさいと言うふたりを、冷酷に感じたことも有ったけれど、それがどれだけ苦渋の選択だったかということも。

溢れそうになる涙を堪えていると、くいっとスカートをひっぱられた。

「ママ」

リラが私を見上げている。

「あっ、ごめんねリラ」

私はリラを抱き上げ、両親に言う。

「娘のリラです」

ふたりは感激したようにリラを見つめる。

しばらく戸惑っていたリラも、元々人見知りではないこともあり、段々と初めて会う祖父母に慣れていった。

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