ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「レオン様はここに向かっている。ルメールからは馬で七日程の距離だ」

「なぜこの町に? 帝都に近付くなんて……」

危険な所に自ら近づくなんて考えられない。不安がる私とは違い、お父様は冷静だった。

「ここにレオン様の味方がいる」

「味方?」

「ああ、ガディオ伯爵家の一族だ」

ガディオ伯爵はレオンの母君ソフィア様のご実家だ。

爵位は高くないが古くからの武門の家柄で、屈強な騎士を抱えていると聞いている。

確かにあの家なら敵の兵士からレオンを守れるかもしれない。

少しほっとしていると、お父様が思いがけないことを言い出した。

「先日次期皇帝が決定したことを受け、レオン様は臣籍に降りガディオ伯爵家を継ぐために動いていた」

「レオンがガディオ伯爵に?」

「そうだ。帝都のソフィア様と連携して動き、皇帝陛下からのお許しも内々に降りていた。来年には帝都で正式にガディオ家の当主の位に就くはずだった」

そんな話、私は何も聞いていなかった。ガディオ家を継ぐなら帝都に住まいを移すことになる。レオンがこの村を出て行こうとしていたなんて……。

< 17 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop