ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「お父様は前からご存知だったの?」

私だけが知らなかったのだろうか。そうだとしたらショックは大きい。

「レオン様から相談を受けていたからな。ガディオ家を継ぎ正式な身分を得たらお前を妻に娶りたいとも仰っていた」

「私を? 本当に?」

「ああ、レオン様は近い内にお前に正式に求婚するとおっしゃっていた。帝国兵が押し寄せて来るなど予想もしていなかったからな……」

私はますます混乱して視線を彷徨わせる。

レオンが私との未来をしっかりと考えていてくれた事実はとても嬉しい。けれど帝国兵の訪れが全てを壊してしまう。

「お父様……この先どうなるのですか?」

彼が危険にさらされていると考えると居ても立っても居られなくなる。

出来ることなら直ぐに追いかけて、側にいたいのに。

不安のあまりぎゅっと目を閉じるとお父様の声が聞こえて来た。

「イリスしっかりしなさい。今は悲しんでいるときではない。間もなく第七皇子の兵がこの館に着くだろう。いきなり危害を加えて来るとは思えないが、レオン様の行方については厳しく問われるはずだ。我々は何も知らないで通さなくてはならない」

「私……出来るのかな? 怖い……」

顔色を変えずに嘘を吐くなんて。それもレオンのことで。

「イリスは幼い頃から嘘が嫌いな子だったから簡単に受け入れられないのは分る。それでも今はやるしかない。レオン様もそう望んでいる」

「レオンが?」

「そうだ。レオン様はなによりお前の身を案じていた。この場を乗り切って無事な姿で再会し安心させてあげなさい」

「……はい」

不安は消えないながらも、お父様の言葉に従う他ない。私は小さくうなずいた。

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