ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「まだ原因は分からないのか?」

セルジュが心配そうに顔を曇らせて言う。

「ええ、ターナー先生も調べてくれているのだけど、今のところは」

「そうか、あんなに小さいのに可哀そうだな。早く治るといいんだけど」

私も心からそう願っていたし、毎日不安で仕方なかった。

「あのさ……そんな中申し訳ないのだけど明日、店に顔を出して欲しいんだ」

「明日? はい、わかりました。さっき言っていた頼みってそのことですか?」

「ああ。急なんだけど明日領主家の方がうちの店の視察にいらっしゃることになったんだけど、リースにも話を聞きたいと言われているんだ」

「私に?」

洋裁店の主のセルジュと話すのは分るけれど、ただの針子に過ぎない私になんの話があるのだろう。

「リースの作ったショールをお嬢様が気に入って下さったんだ。領主家の紋章を入れたものを作って欲しいと言われている」

「先月新しく作ったショールのことですか?」

そろそろ寒さが増して来るので、女性の防寒用にと作ったものだ。

素材は羊毛で華やかに見えるように刺繍を施した。

「ああ、店頭に飾っておいただろう? それがお忍びで町に来ていたお嬢様の目に留まったそうだ。随分気に入って貰えたようで今後注文を増やしてくれるらしい。それで急なんだけど制作環境等を確認するための視察が入ることになったんだ」

「そうなんですか……ありがたいですね」

私の作ったものを気に入って頂けるのはとても嬉しいし、お世話になっている彼の店の役に立てて良かったと思う。

セルジュも嬉しそうに目を細めた。

「明日、頼むね。終わったらすぐに帰って大丈夫だから」

「はい、分かりました。リラのことも配慮して下さってありがとうございます」

「いいんだ、気にしないで。困ったときは助け合わないと。それよりももっとうちの商品を気に入っていただきたいんだ。明日は売り込みも頑張らないとな」

セルジュが張り切って言ったそのとき、玄関の扉がバンと音を立てて開いた。

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