ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
翌日。セルジュとの約束通りリラを叔母に預かってもらい洋裁店に行った。

普段より少し早い時間だ。

視察が入る前に製品の最終確認をしたいと思ったからだけれど、領主家の使者は聞いていた時間より早く到着していたようで、既に小さな来客用の部屋に入っているようだった。

その部屋の扉が開き、セルジュが出て来る。

「おはようリース、落ち着いたらすぐに来てくれるか?」

「はい」

私は短く答えると急ぎで手荷物を仕舞い、それから気に入って頂いたショールと、まだお店には出していない作り終わったばかりのショールを持ち運び用の籠に手早く纏めた。

その動きを見守っていたセルジュが声を潜めて耳打ちして来る。

「急かしてごめん、連絡を貰っていた時間が間違っていたようなんだ」

「大丈夫です。もう用意出来ました」

私は申し訳無さそうにするセルジュにニコリと微笑み、彼と共に領主家の使者の待つ応接室に向かった。

上手く商品を紹介出来るといいのだけれど。

やや緊張しながら部屋に入った私は、そこに居た人物を目にした瞬間、まるで時がとまったように身動きができなくなった。

< 32 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop