ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
目を奪われる艶やかな銀の髪、同色の意思の強そうな眉の下には切れ長の黒い瞳がある。高い鼻梁、薄い唇。

全てがバランスよく配置された完璧なまでに整った顔は、一目見たら忘れられない。

細身の身体と長い手足を黒い騎士服で包み、周囲を圧倒するような存在感を放つ彼は、私が部屋に入った瞬間から目を逸らさずに真っすぐこちらを見つめていた。

彼は初めから私が来ると分かっていたようだった。

射貫かれてしまうような強い視線に身体が震える。

どうして彼が……レオンがここにいるの?

離れていても決して忘れることが無かった愛しい人。

だけど二度と会えないはずだった人。

もう昔とは何もかもが違う。今の彼は私なんかでは近づくことすら出来ない至高の存在になったと言うのに。

頭の中は真っ白で呼吸さえままならない私に、セルジュが戸惑った様子で声をかけて来た。

「リース、どうしたんだ?」

その呼びかけでようやく身体の強張りが解ける。私はレオンから目を逸らし気持ちを落ち着かせる為瞬きをした。

「すみません、大丈夫です」

本当は少しも大丈夫などではないし、この状況が理解できない。

でも私達の関係を知らないセルジュの前で、レオンに事情を問うことは出来ない。

セルジュはそんな私を気にしながらも、レオンに声をかけた。

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