ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「立場は変わっても俺自身はなにも変わっていない。イリスとの約束を忘れたことは無かった。迎えに来るのに時間がかかってしまったが、この先は二度と苦労をかけない。俺たちはこの先もずっと一緒だ」

そう言葉にするレオンは、錯覚かもしれないけれど本当に以前と変わらないように思えた。

懐かしさと愛しさがこみ上げて、彼の胸に飛び込みたくなる。

このままでは流されて余計なことを口走ってしまいそうだった。

私はこの理性を失いそうな空気を変えようと、先ほどから気になっていた疑問を口にした。

「あの……レオン様はどうしてここが分かったのですか?」

私の居所は家族だけが知っている。けれどたとえレオンが訪ねて来ても、行先もリラの出産についても絶対に告げないとお父様は約束してくれていた。

それなのにレオンは今ここに居る。お父様は皇帝の権力に逆らえなかったのだろうか。

私の言葉に、レオンは切なそうな表情を浮かべた。

「一年前、ようやくイリスを迎える環境が整ったのでルメールに迎えに行った。約束通り待っていてくれると信じていたからだ……でも君はいなかった。ルメール男爵からイリスは母からの願いに応え身を退いたと聞かされた。驚き動揺しながらもイリスの行方を問い質したが良い返事は貰えなかった。探さないでそっとしておいて欲しいと懇願されたよ。恩あるルメール男爵に強引な真似は出来ずにその場は引き下がったが、それからもイリスを探していた」

「一年も?」

「ああ、必ず迎えに行くと約束しただろう? あらゆる伝手を使いイリスの行方を追っていた。もし一般市民として暮らしているとしたら得意の裁縫を仕事にしているだろうと予想し、その職業に就いている若い女性の情報も集めていた。初めは国内そして国外にも捜索の手を伸ばし、先日ついに条件に合う女性が居るとの情報を得て今日こうして駆け付けた、領主家の視察団に混じってね」

彼の話を聞いていると、涙がこみ上げそうになった。

皇帝になった今でも私と交わした約束を大事にして、忙しい日々の中探してくれていた。

勝手にいなくなったのに……私がいなくてもレオンが困ることなんてないのに。
彼の気持ちが嬉しかった。

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