ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「作業場の案内が終わりました」

セルジュがレオンの同行者カイルを伴って戻って来た。

他に居た男女は姿が見えなかった。先に帰ったのだろうか。

ふたりの目が有るからか、レオンが掴んでいた私の手を離した。

これで追及から逃れられると、私はほっとしてセルジュに視線を向けた。

すると彼も応えるように笑ってくれた。

「リースの方も終わったようだね」

籠にきちんと仕舞ってあるショールを見て、商品説明が終わったと考えたようだ。

実際には取り出してもいないだけなので、罪悪感を覚えながらも何か返事をしようとすると、それより先にレオンが発言した。

「こちらも用は済んだ。だがもう少し確認したことがあるので後日出直して来る」

レオンは素っ気なく言い、カイルさんを連れて部屋を出て行こうとする。

「かしこまりました、ご検討よろしくお願い致します」

セルジュが慌てて彼を追い、私もその後について行く。

店舗の出入り口に着くと、レオンは私達を振り返った。

「仕事は何時に終わる?」

それは明らかに私に向けた言葉だった。

少し驚いた様子のセルジュの隣で私は気まずさを感じながら答える。

「今日は、夕方までです」

「分かった」

レオンは身を翻し、足早に出て行く。

明らかに機嫌の悪そうなその様子に、私は不安を覚え溜息を零した。

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