ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「私、本当にレオン様の側に居たいと願っていました。子供の頃から大好きで、あの夜第七皇子の兵士が来なければ離れようなんて考えもしなかったと思います」

「だったら! 第七皇子の問題はもう解決しているんだ、もう邪魔する者はいない……イリスやはりもっと話し合いたい。お願いだから付いて来てくれ」

レオンの懇願する目を見ていると流されそうになる。理性では離れなくてはならないと分かっているのに、心が彼を拒否しきれない。

そんなとき、夜の訪れを告げる鐘の音が辺りに響いた。

はっと我に返る。早く帰らなくちゃ。遅くなったらリラを不安にさせてしまう。

「ごめんなさい、今日は本当に時間がなくて、もう帰らないといけないんです」

私の様子から本当のことだと察したのか、不本意そうにしながらもレオンは引き下がってくれた。

「何の用が有るんだ?」

黙ったままの私にレオンは苛立ちを吐き出すように息を吐く。

「あと数日はこの町に滞在するからまた会いに来る。俺はまだ諦めていないから」

「レオン様、私は……」

「答えはまだ聞かない、気をつけて帰れ」

レオンは切なそうに目を細めると、身を翻し来た道を戻って行く。
その後ろ姿を見ていると悲しくなる。追いすがりそうになる自分を叱咤し、リラの待つ叔母の家に急ぎ向かった。

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