ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
レオンは、リラが眠ると私を家の外に連れ出した。庭に置いてある木で出来たベンチに座ると思った通り追及が始まった。

「リラは俺の娘だな?」

確認してきたものの、彼はもう自分がリラの父親だと確信しているのが明らかだった。

「……はい」

観念して頷くと、レオンは言葉で言い表せないような複雑な表情になった。

「なぜ……黙って姿を消したんだ? 子供まで出来ていたのに」

「それは……」

「母の手紙だけが原因とは思えない。イリスだったら俺が有力貴族の姫との結婚など望んでいなかったことくらい分かっていたはずだ」

レオンの言葉は図星で私は開きかけていた口を閉ざす。

確かに彼だったら女性の実家の力で権力を持つことを好まないだろう。自分の力で成し遂げたいと思うはず。

幼い頃から共に育った私達はお互いの性格をよく分かっているから、口先だけの誤魔化しなんて通じない。

レオンは追及を緩めない。

「この町を離れたくない理由も分からない。ルメール男爵の娘として暮らしていたイリスがここでの生活に満足しているとは思えない」

「そんなこと……私は十分満足しています」

「娘に十分な環境を与えられないこの状況で?」

レオンは私達の暮らす小さな家に目を向けながら言う。その指摘に込められた意味を察し私の頬は熱くなった。

私だって今の生活に問題があるのは分かっていた。

リラに沢山の愛情を注いでいるつもりだけれど、経済的に満足できる暮らしではない。

ラヴァンディエ皇家の血筋であるリラは、本来なら王宮で人々に傅かれ何不自由ない生活を送ることのできる身分だ。

そんな彼女が小さな町で、新しいリボンひとつで大喜びするような、つつましい生活を送っている。

教育だってちゃんとした先生をつけることが出来ずに、古本屋で買った本を使って私が教えている有様だ。

このままでは良くないと思っていた。特に教育に関しては不安を覚えていた。

でも、レオンに指摘されると冷静さを保てなくなってしまう。

悲しいとか悔しいとか恥ずかしいとかいろいろな気持ちが次々とこみ上げる。
< 51 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop