ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
彼の後ろ姿が見えなくなると、私は小さく溜息を吐いた。

「セルジュに迷惑をかけてしまったわ。領主様のお嬢様依頼のショールは急ぎみたいなのに、手間をかけさせることになってしまって」

独り言のつもりだったけれど、レオンが反応した。

「注文を受けた分のショールはラヴァンディエに移ってから作り送ればいい、必要な手配は俺の方でする。視察の者はリースのショール以外の品にも良い評価を出していたようだから、あの洋裁店のことは心配しなくて大丈夫だ」

「そうですね……セルジュなら大丈夫ですね」

セルジュも私よりも前から働いている針子も腕はいい。きっかけさえあれば活躍出来るはずだ。

「随分と信頼しているのだな」

レオンは少し不機嫌そうな声を出した。

「ええ、この町に来てからずっとお世話になっていますから……レオン様、怒っているのですか?」

「怒ってなんていない」

「でも……」

「俺のことは気にするな。それよりも転院の準備を急ごう」

レオンは口早に言うと、直ぐに戻ると言い玄関の扉を出て行った。

私は後味の悪さを覚えながら荷造りの続きをし、それが終わるとリラの様子を見に行った。

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