ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「あ、レオンだ!」

リラは嬉しそうに椅子から立ち上がり、私が止める間もなく駆け寄って行く。

レオンは驚いたような顔をした後、少しぎこちない動作でリラを抱き上げる。それから食事をしていたテーブルに近付きリラを再び座らせた。

「遊ぶのは食事が終わってからにしような」

優しく言い聞かせるレオンに、リラは素直にうんと頷き、パンの残りを食べ始める。

レオンはそんなリラの様子をしっかりと観察しているようだった。

恐らく言いたい事が沢山あるのだろうけれど、口には出さずに食後の挨拶をしたリラを抱っこして外に連れ出してくれた。

「わー、たかいねー、セルジュよりたかいよ」

リラは楽しそうな笑い声を立てる。

「怖くないか?」

レオンの穏やかな声。

「うん、リラはだっこ、だいすきだから」

「そうか」

「ママのだっこもだいすき。でもたかくない」

「リラのママは小さいからな」

楽しそうに触れ合う二人は、傍から見ているとまさに親子だった。

同じ銀の髪に、神秘的な黒い瞳。三人でいると私の方が異質に感じるのだろう。

リラもそれを本能的に分かっているのかもしれない。

いくら人見知りをしないからと言って、こんなにあっと言う間に仲良くなるなんて珍しいもの。

複雑な気持ちで二人を眺めていると、リラを抱いたレオンがくるりとこちらを振り返った。

「イリスもこっちにおいで」

「え?」

「リラにラヴァンディエ行きのことを話そう」

「あ……そうですね」

私は頷きレオンに近付く。

「ラヴァ?……ってなに?」

聞きなれない単語だからかリラが不思議そうに首を傾げる。

私はそんなリラを見つめながら言う。

< 70 / 141 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop