ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
その後、私達が検査期間に滞在する病室へと案内して貰った。

「こちらでございます。家族三人で過ごせるようにとの希望に沿った病室を用意しました」

院長先生が自信満々で紹介したその部屋は、病院の中庭を突っ切る渡り廊下の先にある、まるで普通の一軒家のような建物だった。

門をくぐった先に広めの玄関があり、家の中は複数の部屋がある。大きな居間と寝室が三部屋。勿論台所と浴室もあり、不自由なく生活できるような造りになっていた。

備えつけの家具も上品なものだった。

どう見ても、私とリラで暮らすティオール王国での家よりも広く豪華だ。

「ここが病室だなんて……」

予想していたものとあまりに違う部屋に驚いていると、レオンがこっそり説明をしてくれた。

「この病院は王族や貴族も入院することがあるんだ。その為いくつか特別室がある。ここはその一つで、イリスとリラは他国の貴族の奥方と娘だと病院側に伝えている」

私は驚き目を瞬いた。

「貴族って……大丈夫なの? ターナー先生に知られたら変に思われない?」

ミゲル先生はターナー先生の後輩だから、情報を送るかもしれないのに。

「大丈夫だ。ここの医者には守厳しい秘義務があるからな。たとえ紹介状を出した先輩にだって患者のプライベートに関する情報は漏らせない」

それならば大丈夫なのだろうか。

病室の説明を一通りした院長先生たちが立ち去ると、部屋には私達三人だけになった。

リラが疲れている様子だったので、せっかくの台所があるけれど今日は自炊はせずに食事を取りよせて済ませ早めにお風呂に入れて寝かしつけた。

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