ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
リラが眠り落ち着くと、レオンと二人きり。

なんとなく気まずさを感じながら、私は彼の分のお茶を淹れて、レオンが座るソファーの前のテーブルに置いた。

「レオン……いろいろありがとう。私ひとりだったらここまで順調には来られなかったと思う。本当に助かりました」

「当然のことだから、そんな風に畏まって礼を言うなんてよしてくれ」

「でも、何から何までお世話になって……」

言いかけた私の言葉をレオンが手を前に出して遮る。

「もういいから。それよりイリスも疲れただろう? こっちにおいで」

レオンは立ち尽くしたままの私の腕を引きよせる。

強い力に逆らえずに彼の隣に座ることになった私は、その近すぎる距離に戸惑った。

「あ、あの……」

「イリス」

目を逸らそうとしたけれど、レオンがそれを許さない。

逆らえない何かを感じる声音で呼びかけられ、私は彼と視線を合わせた。

「レオン……」

胸がドキリと高鳴った。

レオンの目に、あの夜のような熱を感じたから。

「イリスに別れを告げられてから考えていたんだ」

「……考えて?」

「ああ。どうすればイリスを安心させることが出来るのか。イリスが俺の元に戻って来ないのはリラの身が心配だからだ。その不安は俺の口約束では拭えない。ならばどうすれば納得してもらえるのか」

「え……レオンは離れるのを納得してくれたのではなかったの?」

あの日、レオンは私の懇願に引き下がったはずだった。

「納得なんてしていない。言っただろ? 離れている間もイリスを忘れたことなどなかった。昔から……俺は出会った頃からずっとイリスだけを見て来たんだ。そしてイリスも同じ気持ちでいてくれたはずだ」

レオンの目に切なさが浮かぶ。私はたまらない気持ちになって俯いた。

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