ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「ママのかみはきんいろ。リラとちがうね」

「そうね、ちょっと違うね」

「どうして? みんなママといっしょなのに」

リラの言う“みんな”とは、近所の子供達のことだろう。

この地域は茶色の髪の人が多く、たまたまなんだろうけど、母子で同じような髪色をしているのがほとんどだ。

「リラの髪はパパに似てるのよ」

月の光のような艶やかで神秘的な銀色の髪。

初めて見たとき、物語の天使のようだと魅せられた。今でも目を閉じれば彼の姿を鮮やかに思い出せる。

「そっか、パパのいろかー」

リラは私の説明で納得したのか、嬉しそうに三つ編みに触れる。

リラには父親の記憶がない。産まれてから一度も会ったことがないからだ。

それでもパパという存在は特別なようで、彼の話をするとリラはにこにこと笑顔になる。

今は幼いから、どうして父親が居ないのかなど深く考える様子はないけれど、いつかきっと問い質される時が来る。

そのとき、私はなんと答えればいいのかまだ自分の中で答えが出ていない。

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