ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
リラの検査は順調に進んでいた。

幼子に負担をかけないようにとゆっくりとした日程を組み、特に問題もなく日々は過ぎて行った。

先生の指導の下食事の管理をしっかりとしている為か、リラの体調は安定しており熱も湿疹も出る事はなくなった。
いつも側にお医者様がいる安心感で私の気持ちも楽になっていた。

カサンドラの町にもすっかりと慣れて時間が空けば散歩に出て美しい街並みを楽しんだ。

最近、レオンとの間にあった気まずさも段々となくなっていくのを実感していた。

一緒にいる時間が長くなると彼の立場を忘れそうになる。

昔のようにレオンを身近に感じる瞬間が度々訪れ、その度に自分を戒めた。

リラはレオンの存在をもう当たり前のように受け入れていて、まるで生まれた時から一緒に暮らしているかのようにも見えた。

そんな風に穏やかな時を送っていたけれど、ある日の夜、リラを寝かしつけたあとに一息ついているとレオンに話があると言われた。

「どうしたの?」

改まった様子を不思議に思いながら、お茶を用意してテーブルに着くとレオンが気乗りしない様子で切り出して来た。

「そろそろ帝都に戻らなければならない」

私は少し動揺しながら頷いた。

再会してからずっと一緒に居てくれたので感覚がマヒしていしまっていたけれど、本来レオンがこんなに長い間私用で帝都を離れて良い訳がなかったんだ

彼はこのラヴァンディエ帝国の皇帝陛下なのだから。私達に付き合っている暇などないはずだから。

こみ上げる心細さを顔に出さないようにして私は微笑んだ。

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