ママと秘密の赤ちゃんは、冷徹皇帝に溺愛されています
「分かりました。いろいろと手間をかけさせてしまってごめんなさい。忙しいのにリラの為に動いてくれて助かりました。本当に感謝しています」

レオンは僅かに眉をひそめた。

「リラは俺の娘でもある。そんな他人行儀な言い方は止めてくれ」

「そうだけど……でも何か困っているように見えたから。私達が負担だったのかと思って」

「違う。イリスとリラを置いて帝都に行きたくないから気が重いだけだ」

レオンは言葉通り憂鬱そうだ。

「でもレオンが長く城を空けている訳にはいかないのでしょう?」

「ああ……イリスを迎えに行く前に調整はしておいたがそろそろ限界だ」

恐らくレオンの計画ではすんなりと私を連れ帰るつもりだったのだろう。彼は私がソフィア様に言われて身を退いたと思っているから、拒まれるなんて考えなかったはずだ。

もしかしたら予定よりも大幅に帰城予定が遅れているのかもしれない。

「それならなおさら早く戻らないと。リラのことは心配しないで。私がしっかりと守るから」

そう告げてもレオンは浮かない表情のままだった。

「俺が不在の間は、ふたりをカイルに任せることにした」

「カイル様に?」

「ああ、護衛件相談役として頼ってくれ。俺との連絡もカイルを経由することになる」

レオンはカイルをとても信用しているようだった。

けれど私は四年前に第七皇子の配下としてルメール村にやって来た時の彼の印象が強く、どうしても心を許せない。

とても相談なんて出来ないと思った。

「どうした?」

「……なんでもない」

カイルが苦手だとレオンに訴えても、他の人に役割を変えて貰うのは無理だろう。

私とリラの存在を知っている人事体が少ないため、他に頼れる人はいないだろうし。

憂鬱になったけれど、思い直し気持ちを切り替えた。

元々リラとふたりで暮らして来たのだ。

誰かに頼らなくたって大丈夫のはず。

決意をしていると「イリス」と低い囁き声がして、気が付けばレオンの広い胸に抱き寄せられていた。

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