まさお
それから一週間も経てばずいぶんと暑さも増し、セミも元気に鳴き始めた。
まさおは今日もめだか売りに精を出す。

夕方の少し前、たまにはと仕事を早めに切り上げた。それでも売れた魚は30匹。
のんびり飯でも炊こうと、まさおが米びつを覗く

「ん?」

米が一粒もない。


まさおはギュッと目をつぶってまた米びつを覗く。
やはりない。


おかしい。

米はまだ半分はあったはずだ。なんとも薄気味悪い。しかし、ないものは仕方がない。
おかしいおかしいと唸りながら、まさおはがま口と下駄を引っ掛けて商店街の米屋に向かう。
普段、戸締まりに頓着しないまさおだったがこのときばかりは、玄関に鍵をかけた。


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