月の記憶、風と大地
弥生は夫に対して不満はあるが決して嫌いではない。
しかし夫婦でいる時間は減った。
毎日、定時には帰ってくるが夕飯をとり風呂に入ると眠るだけ。
一緒にいられるだけでいい。
弥生は疑問に思うことはなかった。
最近までは。
このまま夫に飼われたまま年老いて行くことが急に恐くなった。
夫に生活の全てを支えられ、与えられた金でやりくりする。
自分はペットと変わらない。
何のスキルも生き甲斐もないまま、自分は朽ちていきたくない。
こんな考えは贅沢だということもわかっている。
今握り締めているスマートホンの購入や通信費も、夫が全て支払っていることも忘れてはいない。
友人の中には今年二十歳を迎える子供がいる家庭もあれば、まだ学生の子供持ちの友人もいる。
金がかかると嘆いていたが、子供のために節約生活をしているという話が羨ましく思えた。
皆、働いているのだ。
このままで良いわけがない。
弥生が迷っていた最中彼女は見てしまったのだ。