月の記憶、風と大地
特殊繊維を使った商品展開に、医療関連用品が正式に加わる事となった。
製縫を下請け会社に依頼をするのだが、最終的に絞られた関連会社は二社。
それぞれ見積りを出してもらい、委託となる。
鴻江は二社の書類を見比べる。
「昔からの付き合いの、こちらの会社にしようか」
鴻江が入社当時からの付き合いの製縫メーカーだ。
「しかし課長、こちらの工場の方が安く済むのではありませんか?新しいから設備も整っているし」
開発部の若者が答えると、鴻江はため息をついた。
「君はわかっとらんな。新しい工場は経験不足だ。こちらの方が良品ができる。わかったか」
「は、失礼しました」
鴻江は大層らしく頷く。