月の記憶、風と大地
一方、二人になった静と後台は、外に設置してあるベンチに腰かける。
「後台さん、下心がありますよね」
「当然です。静さんが好きですから」
「こりないですね」
静はため息をつき、首だけを津田と弥生の方角へ動かした。
「津田さん、最近優しいですよね。前みたいに私語はどうたら、少なくなりましたし」
仕事に没頭し私生活では子育てに追われ、いかに津田といえど、精神的余裕は実は少なかったのかもしれない。
「穣くんの事を思うと、カリカリしたパパよりは、穏やかな方がいいんでしょうけれど……」
津田は余裕がない素振りは見せないが、弥生を見る時の津田の瞳が気になるのだ。
「弥生さんは人妻です。わかってるんでしょうかね、津田さん」
「心配ですか、静さん」
後台は津田の気持ちは知っている。
恋愛する気はないと云っていたが、津田とて男だ。
相手が弥生じゃないとしても、それを行動にするのかは不明だ。
しかし後台は今それどころではないし、正直どうでもいい。
「津田さんも、いいオトナですから」
隣に座る静に更に近づく。
「……それよりですね、静さん。おれは……」
「さて。もう戻りますか」
静が立ち上がる。
「せっかくの食べ放題、飲み放題コースですからね」
後台の話しは聞く気は無いらしい。
「たくさん食べて、元を取りますよ、後台さん」
「……はい。わかりました、静さん」
悲しげに頷き、後台もそれ以上は諦め席に戻る。
弥生が声をかけた。
「大丈夫ですか、静さん」
「大丈夫です。今からは食べることに専念します。ね、後台さん」
「はい。その通りです」
以前に後台が今の店にいるのは津田がいるからだと云っていたが、九対一の割合で静の為といって、間違いないだろう。
「静さん、化粧品の販売は長いんですか?」
これは弥生がずっと思っていた疑問だったのだが、答えは意外なものだった。
「化粧品販売履歴は三年目です。津田さんと同じく転職なんですよ」
「後台さん、下心がありますよね」
「当然です。静さんが好きですから」
「こりないですね」
静はため息をつき、首だけを津田と弥生の方角へ動かした。
「津田さん、最近優しいですよね。前みたいに私語はどうたら、少なくなりましたし」
仕事に没頭し私生活では子育てに追われ、いかに津田といえど、精神的余裕は実は少なかったのかもしれない。
「穣くんの事を思うと、カリカリしたパパよりは、穏やかな方がいいんでしょうけれど……」
津田は余裕がない素振りは見せないが、弥生を見る時の津田の瞳が気になるのだ。
「弥生さんは人妻です。わかってるんでしょうかね、津田さん」
「心配ですか、静さん」
後台は津田の気持ちは知っている。
恋愛する気はないと云っていたが、津田とて男だ。
相手が弥生じゃないとしても、それを行動にするのかは不明だ。
しかし後台は今それどころではないし、正直どうでもいい。
「津田さんも、いいオトナですから」
隣に座る静に更に近づく。
「……それよりですね、静さん。おれは……」
「さて。もう戻りますか」
静が立ち上がる。
「せっかくの食べ放題、飲み放題コースですからね」
後台の話しは聞く気は無いらしい。
「たくさん食べて、元を取りますよ、後台さん」
「……はい。わかりました、静さん」
悲しげに頷き、後台もそれ以上は諦め席に戻る。
弥生が声をかけた。
「大丈夫ですか、静さん」
「大丈夫です。今からは食べることに専念します。ね、後台さん」
「はい。その通りです」
以前に後台が今の店にいるのは津田がいるからだと云っていたが、九対一の割合で静の為といって、間違いないだろう。
「静さん、化粧品の販売は長いんですか?」
これは弥生がずっと思っていた疑問だったのだが、答えは意外なものだった。
「化粧品販売履歴は三年目です。津田さんと同じく転職なんですよ」