月の記憶、風と大地

横領した金は大部分は家族に渡していたらしく、残りは自分の会社のロッカーや貸し倉庫内に分散して隠していたようだ。

横領が発覚しなければ退職後は家族で海外で暮らすつもりだったらしい。

妻は夫の稼ぎでランチにエステ、旅行を楽しみ、娘と息子は小遣いを父親にせびっていたそうである。

慎ましく暮らしていれば生活に困窮することはなかったはずだが見栄を張り、金で父親の威厳を保っていたようだ。


歪んではいたが、それは鴻江なりの愛情表現であったらしかった。


社内では少々、浮いていた彼も町内の自治会の集まりに参加しよく働き、近所では彼を悪く云う人物はいなかった。

経理部と委託先の製縫会社の共謀者であった人物も同じく会社から告訴された。

白衣だけではなく、普段から購入金額より高い金額の領収書を切っていたりしていたらしい。

地検特捜部に追起訴され刑罰を受ける事になるだろう。









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