その瞳に私を写して
「私の方こそ楽しかった。また時間があれば一緒にご飯食べましょ。」

「はい。」

「じゃあね。」

そう言って私は自分の家に向かって歩きだした

その時だった


「麻奈さん。」

「ん?」

麻奈は、勇平の声で振り返った。

「家まで送ってもいいですか?」

「誰を?」

「麻奈さんを」

「誰が?」

「俺が」

それは想像もしなかった言葉だった。


しばらく声も出ずに、麻奈の口からやっと出た言葉が、「ええ……」だった。

少しはにかんだ笑顔で、勇平は麻奈の横に来た。

「行きましょうか。」

「うん。」

そう言って二人は、一緒に歩き出した。


不思議な気分だった。

恋人じゃない人に、しかも年下の男の子に、女性として扱われる心地よさと恥ずかしさ。

なんだか心の奥が、くすぐったくなった。


「坂下君は一人暮らしなの?」

「一人暮らしというか……ホテル住まいなんで」

それだけの会話だった。

それだけの会話なのに、麻奈の心は、温かくなってような気がした。
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