その瞳に私を写して
「そんな麻奈さんに、実はお願いがあるんです!」

突然勇平は、そう言って床に正座をした。


「麻奈さんの家に、俺を居候させて下さい!」

「はあっっ!!!」

「NYに来てから、ずっとホテルに泊まってたんですけど、お金がなくて、もう泊まれないんです。」

「ええっっ!!!」

「俺、何でもやります!掃除とか、洗濯とか、料理とか!とにかくなんでも!」


淡い気持ちどころか、血の気がサアーっ引いていくのが、麻奈には分かった。

勇平が麻奈を家まで送ったのも、家の前で麻奈を引きとめたのも、全部帰るところがなかったからだ。

「お願いします!!」

あまりの唐突さに、冗談だと思いたい麻奈。


「ダメですか~。」

勇平は顔を上げて、情けない声を出す。

「俺、料理もしますよ。」


麻奈は思った。

別に一人くらい住まわせる部屋はあるが、一時淡い恋の予感などを感じてしまった男の子と、このまま一緒に住んでしまっていいものなのか。
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