その瞳に私を写して
その人の、実力次第なのだ。

厳しい世界だが、チャンスをいくらでもあるんだ。


「勇平君、仕事決まったかな。」

好きだからこそ、勇平を応援する気持ちは、人一倍強くなったような気がした。

その日、麻奈は勇平が気になって、早めに帰宅した。

明かりはまだ、ついてなかった。


「まだ、帰ってきてないのかな……」

鍵を開けて入ったら、真っ暗な家の中で、勇平の部屋の明かりが、ドアから漏れていた。

「勇平君?」


何の返事もない。

もう一度、名前を呼びながら、部屋のドアを開けた。

そこには床で、小さくなっている勇平がいた。


「ああ、麻奈さんおかえり。今、夕食の準備するから」

そう言って、慌てて立った彼の側には、束になった手紙が置いてあった。

その一通を拾って見てみると、中には”不採用”の文字があった。


「勇平君、これ……」

勇平は黙って、キッチンへ行ってしまった。

言葉に詰まった。

全部、ダメだったんだろうか。
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