その瞳に私を写して
家の玄関を出てすぐに、勇平は腕を出した。

「いいの?」

「当然。どうぞ。」

私は差し出された腕に、自分の腕を組んだ。

年下の男の子っていうのは、男性の部分と少年の部分を、変わり変わり見せてくれる。

それが、魅力の一つなんだろうなぁと、麻奈はこの時思った。


しばらく歩いて、勇平は一軒の店を、指さした。

「ああ、ここ。」

「ここ?」

そこは、麻奈が初めて訪れるビルだった。


ビルに入ってすぐに、エスカレーターに乗る。

「何階に行くの?」

「6階。」

随分上に行くなと、麻奈が思っていると、気のせいだろうか。

上の階から降りてくる人に、さっきから見られているような気がする。


麻奈は英語は得意ではないが、”ああ、あの人”といった感じで、皆麻奈を見ていく。

「ねえ。さっきから私、見られているような気がするんだけど。」

「ん?」

勇平は、気のせいだよとも言わずに、ただ上の方向を向いている。
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